赤いクチバシに運命をゆだねて【瑞豊夜市・文鳥占い】
占い
占いというものは信用していない
占いを受けるとしたら、”単純に面白そうだから”とか”ロマンがあるから”といった理由から足を運ぶのであり、真剣に示唆を求めて行くわけではないと思う
なぜ信用できないのか
そこに”占い師の意思”が介在してしまうのが大きな原因であると思う
占い師の揺るぎない直感を突きつけるというより、相手を見ながら双方の意見のすり合わせが行われているように見えるのである
そんな占いへの不信感を募らせた自分が行き着いたのが文鳥占いであった
それは旅行雑誌かなにかで見たのであるが、文鳥が札を引き、その札をもとに占い師が運勢を教えてくれるというものであり、ここにはおそらく予定調和なものは介在しないと思われる
まず自分自身が文鳥を飼っているからわかるのであるが、文鳥のクチバシというのは本当に無慈悲である
あの鋭利なクチバシを平気で眼球に突っ込んでこようとする
人間であれば当然眼球のような箇所は触れてはいけないとわかるのであるが、文鳥のクチバシには知性のかけらもない
これは文鳥を蔑んでいるわけではなく、あくまでクチバシのみへの恨みである
そんな文鳥のクチバシによって介在された占いの札は、完全に世間と切り離されているに決まっている
この文鳥占いによって突き進む道が見えてくるのではないか
そんな期待をこめ、台湾へ向かった
瑞豊夜市へ
文鳥占いをするために台湾に行ったような書き方をしたがもちろんそんなことはなく、高雄や台南を観光するなかで体験しておきたいことのひとつとしての位置づけであった
その文鳥占いがある瑞豊夜市は、高雄にあった
台湾の夜市というものははっきり言って清潔ではない
無理な人には無理だと思う
ただ台湾に来たのはもう3回目とかなのでこの感じにも慣れてしまったし、ちょっとくらい変な臭いがしても動揺しなくなった
そんな夜市の奥の方に、それはあった
ただ、占いをしてもらいたいものの、どうやって声をかけていいかわからない
ここで台湾人の友人を頼ることとして、
「占いの結果について言葉ではなく文字に書いて教えてください」といったような意味の台湾語をその友人にLINE上で書いてもらい、それを占い師に見せた
そして占いが始まった
かわいいかわいい白文鳥ちゃんの無慈悲な赤クチバシがひとつの札を選ぶ
その札を見てなにかを熱心に書き始める占い師
うちはもう仕事終えましたから みたいな清々しい文鳥の顔がなんとも
お 極端に文章量が減ったのでもしやあれは占いの結果では!?
ででーん!もらいました!!
どんな結果かな ワクワク
台湾人の友人にこの紙の写真をLINEで送り、翻訳してもらうことに
ただ、漢字が用いられているためちょっとわかる部分もある
例えば①なんかを注意深く見てみる
”今年不好”と書かれてない・・・?やばくない?気のせい?
台湾では”不”が”超”みたいな意味を持つのかもしれない
日本語でも”クソみたいに美味い”なんてたまに言うことがあるし、"不好"はめちゃくちゃ良い意味に決まっている
④の”長官不全”は上司が錯乱するか急死するのではないだろうか
堪忍してもらいたい
⑥の”明年運気平平”は翌年である2020年がつまらない1年になることを示している気がする
1年を”平平”なんて漢字で総括されてたまるか
様々な憶測に悩まされているうち、LINEが返ってきた
カスでした カス
こんなにカスなことある?
まずこの台湾に行ったのは2019年12月21〜22でございまして、今年というのはあと10日弱のことを指す
きちんと6には来年の2020年のことが書いてあるので
あと10日のうちに自分にどんな不幸が降りかかるというのか
今年の冬のほうがいい だなんて意味がわからない
もう冬に入ってしまっているのである
そしてこの冬のあと10日弱の運勢はカスの極みなのでエゲつなく矛盾している気がする
こうして、文鳥のクチバシに全てを託していた自分は2019年残り10日弱を震えながら過ごすことになった
結局大したことは起こらず、”平平”と称された2020年は未曾有のパンデミックにより世界が大混乱に陥った
文鳥占い
世間と切り離されたクチバシは本当に世間と切り離されてしまっていた
きっとどこかの並行世界のひとつで”平平”な、なんのウイルスも蔓延していないクリーンな世界が実現されているのだろう
その世界において俺はおそらく同僚と上司と友達に嫌われているのだけれども